コンサルティングの質を高める、資料作成の標準化。価値ある仕事にリソースを集中するためのthink-cell活用術

1991年の設立以来、サスティナビリティやヘルスケア、地方創生といった領域の社会課題の解決や、企業変革の支援に向けたコンサルティングを手掛けるNTTデータ経営研究所。「よりよい社会への道筋を照らす」を企業理念に掲げ、官公庁に対する提言と民間企業に対するビジネス支援という2つの分野における実践的なコンサルティングを強みとしています。
同社のコンサルティングサポートを担う部門では、資料のクオリティ向上やブランドの一貫性の担保、そしてクライアントへの価値を向上させるため、PowerPointで最高レベルのプレゼンテーションを作成するためのオールインワンソリューション「think-cell Suite(以下、think-cell)」を活用し、資料作成に日々取り組んでいます。think-cellを活用するに至った背景や課題、活用術、得られた成果について、ご担当者さまにお話を伺いました。

会社名 |
株式会社NTTデータ経営研究所 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. |
事業内容 |
企業経営および行政に関する調査研究ならびにコンサルティング業務など |
利用用途 |
提案書作成、報告書作成、定期レポート作成、市場調査、データ分析、グラフ作成 |
使用機能 |
ウォーターフォール図、縦棒グラフおよび横棒グラフ、折れ線グラフおよび面グラフ、円グラフおよびドーナツグラフ、散布図およびバブルチャート、チャート注釈機能、Exceリンク、ガントチャート
商用利用可能な画像とアイコン、250種類以上のビジネステンプレートスライド
整列とサイズ変更、フォントの置き換えとサイズ変更 |
課題(Challenges)
- 資料の見た目調整に多くの工数が割かれ、思考や検証にかける時間が圧迫されていた
- 過去資料やアセットの検索・再利用が煩雑で、資料作成にかける時間が長くなっていた
- 企業としてのブランドの一貫性を、資料一つひとつまで落とし込めていなかった
目的と解決策(Solutions)
- 資料の見た目を整える業務を自動化・効率化するツールを求めていた
- スタイルやフォーマットを標準化し、資料品質のバラつきを抑えたい
- 資料のトーンや色調を統一し、クライアントからの印象を強めたい
効果(Results)
- ガントチャート作成やアセットの検索などにかかる時間を短縮し、業務を効率化
- 視覚的に訴求力の高い資料が作成でき、提案のロジックや価値の構築に集中できた
- 提案資料の統一感やクオリティが、クライアント評価の向上に直結した
クライアントの意思決定を左右する資料の質。プロジェクトを前に進める伝える力とは

- ー ライフ・バリュー・クリエイションユニットの業務内容を教えてください。
徳村 光太様(以下、敬称略):主にヘルスケア領域における事業戦略のコンサルティングやリサーチ業務などを行っています。健康増進から医療・介護まで、ライフサイクルに沿った幅広いテーマを扱っており、官公庁やDXを推進する介護企業などが私が担当している主なクライアントです。
ユニット全体ではおおよそ100名ほど在籍しており、プロジェクト単位では2〜10名規模でのアサイメントが多いですね。在籍している100名のうち、およそ30名がthink-cellを活用しています。活用のきっかけは、社内のブランド推進部からの案内メールからアカウントを取得したことによります。私は導入初期の頃から活用していたので、ユニット内への周知役としてthink-cell活用を推進してきました。
戸髙 大我様(以下、敬称略):think-cellを積極的に活用する背景には、私たちの業務においてMicrosoft PowerPoint(以下、PowerPoint)による資料作成が中核を占めているという背景があります。クライアントへの提案書から始まり、受注後の週次・月次の報告書、そしてプロジェクトをクロージングする最終レポートまで、ほぼ毎日何かしらの資料を作成していると言っても過言ではありません。
また、社内に向けた説明資料でもPowerPointを使用しており、ユニット内の方針共有やナレッジの蓄積、研修用の資料など、多岐にわたります。
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ー コンサルタントの業務において、資料作成はどのような位置づけと捉えていますか。
戸髙:コンサルタントの役割は、クライアントの意思決定を支援するために最適な提言を行うことにあります。そのうえで、「資料作成」はあくまでその提言を実現するための手段であり、目的ではありません。ただし、手段であるからといってなおざりにして良いという事はありません。資料には、仮説や論点の構造化、収集したデータの整理や分析結果の提示など、思考を深めるための“道具”としての役割があります。そして同時に、考えたことを正確かつ説得力をもってクライアントに伝える“伝達手段”でもあります。
また、資料には客観的な根拠を示すだけでなく、「あなた自身はどう考えるのか」といった主観的な見解を込める場面もあります。そうした意味で、資料はコンサルタントの思考や視点そのものを体現する存在だと言えるでしょう。
つまり「資料作成」という工程は、クライアントの意思決定を支える提言を成立させるうえで欠かせない、重要なプロセスのひとつだと捉えています。
手を動かす資料作成の作業が、コンサルタントの頭を動かす時間を奪っていた

- ー think-cellを導入いただく以前の資料作成では、どのような課題を抱えていましたか。
徳村:大きく2つの課題がありました。まず、各コンサルタントが作成した資料をひとつにまとめ、体裁を整える作業に時間と手間がかかっていたことです。図形の整列やグラフの色調整、フォントの統一といった、本質的ではない「作業」に時間が割かれることが多く、本来時間を割くべき提言のブラッシュアップや各資料の整合性、論理構成に無理がないかを確認し、よりよい提言になるよう「考える」時間をいかに確保するか?に課題を感じていました。
2つ目の課題が、各コンサルタントから上がってくる資料のクオリティにバラつきがあったことです。伝えたい内容や提言は言うまでもなく重要ですが、見せ方も資料に欠かすことができない要素です。しかし、コンサルタントの経験やスキルによって仕上がりには差が出ており、クライアントへ提出する資料にまとめる前の段階で、資料のクオリティを高い水準で統一したいと考えていました。
戸髙:コンサルタントにとって、資料の見栄えを整える工程は欠かせません。たとえば複数のスライドでフォントや色のトーンが揃っていなかったり、出典が明記されていなかったりすると、それだけでクライアントからの印象は下がります。“整っていない資料”は、それだけで受け手に不要なストレスを与えてしまい、たとえどれだけ良い提言であっても伝わりにくくなってしまうのです。
徳村:資料は、私たちコンサルタントの仕事における起点です。クライアントとの打ち合わせでは、資料をもとに議論し、次のアクションを設計し、最終的な落としどころを決めていきます。だからこそ、資料の見栄えを整える作業に時間と手間をかけすぎて、思考や調査に割く時間を削るのは本末転倒です。非本質的な作業の負担が軽減し、より価値あるアウトプットに集中できるツールが求められていました。
きっかけはブランド力の強化。実務目線の課題解決が、think-cell導入の決め手に

- ー think-cellはどのようなきっかけでお知りになりましたか?
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徳村:他ファームで実務経験があるベテランコンサルタントから、弊社のブランド力強化の施策のひとつとして「資料に使われるコーポレートカラーやフォントを統一すべき」との提案があったことがきっかけと聞いています。実際に外資系大手ファームでは、各社が独自のコーポレートカラーを全面に打ち出しており、弊社でも提案資料の色味や体裁から「NTTデータ経営研究所」をクライアントに想起させ、長期的な取り組みにつなげたいと考えたのです。その提案資料内で、コーポレートカラーやフォントを統一する具体的な手段として紹介されていたツールが、think-cellでした。そのベテランコンサルタントが前職の他ファームでthink-cellを活用していたこともあり、ブランド力強化と同時に資料作成の業務効率化を実現するために有効だと評価され、PoCで社内検証し、正式に導入を決定しています。
- ー 2024年にthink-cellを導入いただきました。社内への周知後、どのようなきっかけから活用しはじめたのでしょうか。
戸髙:think-cellを活用するかどうかはコンサルタント個人の判断に任されており、コーポレート部門に自己申請でアカウントを発行してもらいます。私がthink-cellに興味を持ったのは、他ファームでも導入されているらしいとの話を耳にしたことがきっかけでした。資料作成に手間と時間がかかることにずっと課題を感じていましたので、コーポレート部門から案内メールが届いてすぐにthink-cellのアカウント発行を申請しました。。その後、think-cell Japan社が主催するユーザー向け勉強会で実際の操作方法を学び、実際の資料作成業務に導入し始めました。
チャートの作成からアセットの検索、一貫性の担保までをカバーする、think-cellの活用術

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ー think-cell Chartsのグラフ作成機能を、どのように活用していますか。
徳村:私の業務では、まずプロジェクト全体を可視化、管理するための資料作成に活用しています。具体的には、プロジェクト全体の進行状況を可視化するための「ガントチャート」や、プロジェクト全体のタスクの流れを可視化する「矢羽根スケジュール」などの機能が多用されます。特に「ガントチャート」を作成する際に日付を選択するだけで自動的にデザインが調整されるのは便利ですね。この2つの機能だけでも、全体のスケジュール資料の作成時間が10分の1にまで短縮されました。
戸髙:私が提案資料の作成時によく使うのは、「ファネルグラフ」や「横棒/縦棒グラフ」などのチャート作成の機能です。特に「ファネルグラフ」の機能では、思い通りの図が作成できるようになり、各フェーズごとの数字の変化を視覚的に伝えられるようになっています。おかげで、以前は口頭で伝えるしかなかった細かい情報も、分かりやすい図でクライアントに伝えられるようになっています。
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ー think-cell Libraryのコンテンツ検索機能を、どのように活用していますか。
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徳村:私が「革命的だ」と感じたのが、think-cell Libraryです。たとえば、ヘルスケア業界の提案資料には、提言のターゲットを分かりやすくするため、ドクターやナースなど特有のピクトグラムを資料に挿入することが多々あります。以前は、資料作成中にわざわざ外部の素材サイトにアクセスし、イメージに近いアセットを探す必要があったのですが、今ではthink-cell LibraryのおかげでPowerPoint内でアセットを探すことができるようになっています。
また、社内テンプレートや過去資料をチーム内のライブラリに格納しておけば、瞬時に使用したいスライドを呼び出せます。アセットを探す、過去の資料を再利用するといった面倒な作業がPowerPoint上で完結するようになったのは、実務上とてもありがたいですね。
ー think-cell Coreの生産性と資料の一貫性をサポートする機能を、どのように活用していますか。
徳村:各コンサルタントから上がってきた資料を統一する際の“整える作業”に、think-cell Coreを活用しています。たとえば、テキストボックスを自動整列・統一できる機能や、スタイルファイルの設定で規定のコーポレートカラーに自動で揃えられる機能を活用しています。
業務の効率化はもちろん、資料のクオリティ向上でクライアントから高評価。収益向上にも貢献

ー think-cellの導入で、資料作成の業務はどのように変化しましたか。
徳村:一番大きいのは「資料の内容を考える時間」と「資料の見た目を整える時間」を、完全に切り分けられた点です。以前は図形を整列させたり、色やフォントを手作業で調整するような頭を使わない作業に多くの時間が取られていました。
いまはそれらの作業をthink-cellに任せ、私たちコンサルタントが本来時間をかけるべき思考やディスカッション、リサーチに集中できるようになっています。もちろん、資料の品質は以前と比べても遜色ないレベルで安定しています。
戸髙:アイデア次第で視覚的な訴求力がある資料を作成できるようになりました。特にコンサルティングの現場では「ぱっと見で分かる」「クライアントの印象に残る」といった要素が、提言の説得力に直結します。具体的な数値にこそ表せませんが、資料の表現力が高まったことは、収益向上にも確実に寄与していると思います。
ー think-cellの導入で、どのような成果が得られましたか。
徳村:定量的な成果では、資料作成の時間が大幅に短縮されたという実感があります。たとえば、以前は1時間近くかけて探していた過去の資料が、think-cell Libraryのおかげで10分かからずに見つかるようになりました。また、「ガントチャート」「矢羽根スケジュール」の機能で全体のスケジュール資料の作成時間が10分の1にまで短縮され、さらに下書きがある状態だと3〜4時間かかる作業が15〜30分程度で終わるようになっており、劇的な業務効率化です。
ー think-cellの導入に対するクライアントからの評価をお聞かせください。
戸髙:プロジェクト完了後のアンケートで「資料全体のトーンが揃っていて分かりやすい」「報告書の印象が良かった」との好意的な評価をいただいたことが印象的です。think-cellは成果物全体の品質向上に一役買っていると感じます。最近取り組んだ中堅企業とのプロジェクトでも、評価の中に資料品質の高さが含まれており、それも寄与して、次のフェーズに関するご相談につながりました。
私たちコンサルタントの仕事にとって、報告書は単なる結果報告ではなく、次の意思決定を導くきっかけになるべきです。雑念のない、統一感のある資料であることは、クライアントの経営判断を支える重要な要素だと考えています。
コンサルティング以外でも社内活用を広め、全社でより本質的な仕事に集中していきたい

ー 今後の展望をお聞かせください。
徳村:2025年時点で社内のthink-cell利用者は約130名、全体の4分の1ほどです。今後はコンサルタントに限らず、企画職やコーポレートスタッフも積極的に活用すべきだと考えています。たとえば、論点を整理してストーリーを構築する提案が求められる場面では、think-cellの機能は十分に価値を発揮します。もちろん、ただツールをインストールしただけでは使われません。まずは「使いたい」と社内に思ってもらえるよう、研修やサポート体制の整備も今後必要だと感じています。
戸髙:think-cellの新しい機能はどんどん試していき、コンサルタント同士でも便利な活用術を模索したいですね。プロジェクト単位でコンサルタント同士が一緒に取り組む際には、全員がthink-cellを使えることを前提に動いていますので、一般的な活用からさらに一歩踏み込んでいきたいと思います。
ー 資料作成に課題を感じている方に向けたアドバイスをお願いします。
徳村:think-cellの価値は、資料の見え方に関する業務を効率化し、考える時間を生み出せることです。もちろん資料の「見栄え」は大事ですが、最後は「中身」の勝負です。「中身」の作り込みに集中し、生成AIやツールでは代替できない「人が本当にやるべき仕事」に集中するために有効なツールだと思います。